居心地のよい空間づくり
照明による空間づくり
しかし、照明技術の発達によって、現代では夜でも昼間と紛うばかりの明るい光で過ごせるようになりました。しかしながら、火ともに歩み出した25万年の歴史から比べると、この夜の煌々とした灯りは、たったの130年ほどの歴史しかありません。
この生物学的な長さからいうと、一瞬とも言えるほどの短期間で起こった変化は、私たちの健康にはどのような影響が出ているのか、照明を作っている私たちは、その影響について可能な限り注意していく必要があると考えています。
居心地と照明の関係
「居心地が良い空間」「悪い空間」などの言葉が表すように、空間は人間の心理に大きく作用します。そして照明は、太陽の自然光が不足した環境にあっては、空間そのものの印象を決める重要な役割を担っています。その照明は、大きく次の3つの特性の組み合わせによって、様々な表情を映し出す事ができます。
1.色温度とそれが与える印象
色温度とは、光の色合いのことで、K(ケルビン)という単位で表します。Kの数値が高いほど白っぽくなり、低いほど赤っぽい色合いになりますが、これによって空間の雰囲気はガラッと変わります。
あかりの色温度が低い(暖色系)と温かみがあって落ち着きのある空間になります。安らぎをもたらす副交感神経に作用する光色とも言われます。一方、色温度が高い(白色系)光は、すっきりとして集中力が高まる空間になります。こちらは緊張感や集中力をもたらす交感神経に作用する光と言われています。
したがって、よく、リラックス空間であるカフェや高級レストランなどでは暖色系、職場環境であるオフィスや集中力が求められる学習塾では白色系の照明が使用されています。これは、場所の目的に沿ってその色合いを上手に変え、空間に意味を持たせる光の上手な使い分けの例なのです。
2.照度と色温度との相性
色温度と合わせて考えなければならないのが、照度・輝度などの「明るさ」です。色温度と照度には相性があるため、相性の良い組み合わせだと心地よさを感じますが、相性が悪いと不快さを感じてしまいます。
この図は、色温度と照度の相性を表した、クルイトフカーブというものです。
これを見ると、白い光は強めの明るさ、暖色の光は弱めの明るさとの相性がよく、快適だと感じることがわかります。反対にいえば、弱くて白い光だと冷たく薄暗い印象になり、強い暖色の光だと暑苦しさを感じるといった、不快な領域に入ってしまうのです。
これは皆様の経験的に、そして直感的にご理解をいただけるものではないでしょうか?
3.ライティング効果
次に色温度と明るさの組み合わせをベースに、それを空間にどのように配置するかというライティングの手法によって、様々な空間を演出することができます。
例えば、間接照明などで天井を強調すると、空間が上に広がるように感じるので、開放的な印象になります。また、ダウンライトで壁を強調すると、空間が横に広がるように感じる効果があります。こういったライティングの工夫で、同じ空間でも様々な印象に変えることができるのです。
また、当社は火の色を模した『火の色電球』というものを商品化していますが、この照明は、焚き火の火のように地面近く、低い位置や、あたかも石灯籠のような堅牢なスペースに距離を置いて配置をした場合、なんとも言えない温かみを感じますが、逆に集中して頭上に配置をするような場合は、火の塊が落ちてきそうな不安感が出てきます。LEDなので落ちてきても火傷をするようなことはありませんが、人がもつ本能がそのような感覚をもたらすのでしょう。
ライティングというと難しいような気もしますが、そういったことを肌感覚で考えて楽しんでみるというのも照明を楽しむ一つの方法だと思います。
▲天井・壁をそれぞれ照らすライティングのイメージ画像