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あとがき

 子供の頃に思った違和感がある。

 「見た目は使えるのになんで捨てなくてはいけないのだろう?」

 それは、乾電池と、電球であった。

 もったいないな、と思い続けた。18歳で東京に来てみると、米国風のファーストフードが街を覆い、そこでは当たり前のように紙を捨て、お店では割り箸を使い、スーパーでは小分けで便利になるほど、パッケージのゴミは増え続けた。

 異常気象が世界を覆っている。学術的なものはわからないが、今までの使い捨て文化による地球資源の乱獲が原因なのだろうと感じているのは、私だけではないと思う。

 乾電池は、充電できるタイプのものが登場してから、すでに10年あまり経つ。

 電球は、果たしてどうだろう?

 確かに、消費電力も少なく、寿命も以前よりも長いLED電球というものは登場した。誰もが、ゴミのない便利な社会を期待し、多少高価でも地球のために、電力のために、限りある資源の為に購入した。
 しかし、フィラメントとガラスだけでできた電球と、99.999999999%の濃度まで高純度化された多結晶シリコンを約1420℃で融解させ、0.2mmの厚みに均等にスライスされた半導体ウエハーを、1㎥に0.5ミリのシャ-プペンの芯の細さの100分の1の小さい粒が35個しか許されないという、管理されたクリーンルームという特別な空間にて、露光、エッチングなどの工程を繰り返し、血液の白血球と同じ太さの金を使ったワイヤーで実装されたLED素子に加え、数多くの電子部品や金属を使用した、LED電球とでは、その使用している資源を比較すると、果たして本当に、エコと言えるのか、私は、甚だ疑問に感じている。
 しかも、その寿命を左右するものが、たった十円ほどの電子部品(電解コンデンサー)によって決められ、故障し、捨てられていく。

 私は、自分が持ってしまったこの疑問を解決するために、商品を生み出し、結果的には安定した生活をかなぐり捨てて、今にも沈みそうな小舟で荒波を漕ぎ出している。今でもなぜ、自分がここにいるのかわからなくなることがある。そして、今、していることが果たして本当に自分の身の丈にあっているかどうかは、甚だ疑わしいと思っている。

 この技術は、そもそも北島という天才エンジニアの無償の協力を得て誕生した。そして実際に、未だに私は、彼にはなんの報酬も払っていない。(誠に申し訳ないと思うが)
 そして、その善意の上に、さらにたくさんの人の善意の協力を得てこの商品は存在している。

 アニメ、ドラゴンボールで、孫悟空は“元気玉”を作りながら言った。「みんな、オラに少しだけ元気を分けてくれ」。三国志で、主君の子供を胸に抱えながら曹操軍100万人を駆け抜けた趙雲子龍は、力尽きそうな寸前、遠くの橋の上で虎髭をなびかせて立っている張飛を見て叫んだ。「張飛、俺を助けろ」。

 私は、これからも、世界中の照明が電解コンデンサーレスLEDのような、本当にゴミが出ない世界が実現するまで、できる限りの努力をしていくつもりである。そのために、そして間違いなくみなさんに向かって、孫悟空のように、趙雲のようにお願いをさせていただくものと思う。なぜなら、自分が明らかに力不足であることは身にしみて理解しているから。
 私は、これからも挑戦し続けるし、やり続ける義務があると思っている。

 難しいことはたくさんある。でも、底辺の想いは極めて単純である。

“壊れない電球っていいよね”

ありがとうございました。



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書籍情報:加賀谷史央著『「タフらいと」誕生物語』(株式会社ネスパ, 2018年)

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